2月2009

隠し塩、隠れ砂糖

 Aさんは薄味が苦手だ。はっきりした味でないと食べた気がしない。
妻はだしをきかせた料理が得意なのだが、結婚後20年もたつのに妻の料理よりデパートやスーパーで売っている加工食品の方が好きで、夕食でも自分で買ってきたものを食べてしまう。そのことでもめたこともあったが、妻ももうあきらめて、Aさんの好きなように、ということにしていた。

 ところが、最近の検診で血圧が180近くなり、生活改善を指摘されてしまった。塩分をひかえるようにいわれたが、これが大変。Aさんは何にでもしょうゆやソースをたっぷりかけなければイヤなたち。しかも、塩分をひかえるコツになるだしをきかせたものも嫌いだし、風味をよくして塩分を減らすことができるお酢も好きではない。

 Aさんの母親はフライや天ぷらをよく作り、Aさんは塩をたっぷり使った料理を食べて育った。妻がいくら塩分の少ない料理を作っても、子どものころに食べたものの影響の方が強いようだ。

 さて、アメリカがしばらく前から無脂肪ブームなのはご存知の通りである。チーズからヨーグルトまでしっかりノンファット。

 しかし、脂肪はなくても砂糖は入っている。それだけダイエットを気にするなら砂糖を気にした方がいいと思うのだが、何にでも砂糖なのだ。
 私は甘いものは嫌いではないが、甘くちゃいけないものまで砂糖が入るのは困る。フランスパン、ヨーグルト、ミルクにまで砂糖だ。砂糖0グラムという表示のパンを見つけたことはない。

 日本では隠し塩を使うが、アメリカでは隠れ砂糖なんだと気がついた先日の大統領就任式を研究室スタッフとランチをとりながら見たが、ピザの方が野菜たっぷりのラップサンドより人気。子どものころからの食生活は、その後ずっと影響する。親や大人の責任は大きい。

2009.2.22.sun

真意はどこに?

 子供のころから両親の仕事の関係でアメリカで生活することが多かったAさん。最近3ヶ月ほど東京に出張することになり、家具つきのアパートを借りた。
 食器や料理の道具など細々としたものが不足しているが、短期なので購入するのもためらってしまう。東京は物価も高いからなおさらだ。

 そんな折り、たまたま夫の友人の家に招かれ、食事をごちそうになった。とても親切な家族で、「うちは使わない食器やおなべが多いから、どうぞもっていって使ってください」と言われた。
 Aさんの印象ではいつまでもお使いになっていいですよ、という雰囲気があったから、ありがたくお借りした。おかげで料理するのが楽になり助かったそうだ。

 ところがひと月たったころ、夫の別の友人の家族から、「Aさんが借りた食器をなかなか返してくれないから、貸した人が困っている」といううわさを聞いてびっくり。Aさんはうわさがたったことにも驚いたが、どうして直接返してほしいと言ってくれなかったのだろう、と不思議がっていた。

 日本式リップサービス、というのだろうか。わが国独特のコミュニケーション方式というものがあるのは否定できない。いつまでもどうぞ、と言われても、言葉通りに受けとってはいけないこともある。何でも言ってください、と言われてその通りにしていたら、とんでもないことになる。言葉の裏を考え、相手の真意を「察する」という技が必要なのである。

 アメリカのように、はっきり相手に直接ものを言うコミュニケーション方式とは全く違う。

 どちらがいい、悪いということではないが、違いを認識していないとトラブルのもとになる。育った環境によってコミュニケーションの方法はさまざま。違いがあることを認識しておくのが大切なのだろう。 

2009.2.15.sun

風邪をひいても

 試験のシーズンだが、試験の前というと風邪をひいてしまう人がいる。
 Aさんは大事な試験の1週間前に風邪をひき、母親から「プレッシャーに弱いんだから」と言われ、自信をなくしてしまった。

 Bさんは仕事でプレゼンをしなければいけない時、必ずといっていいほど風邪をひく。そういえば、若いころは試験の前というと風邪をひきました、とBさんは言う。

 大事な仕事や試験やここぞという時に体調を崩すと、プレッシャーに弱いとか、緊張しすぎとか言われてしまう。だから、体調の悪さに加え、「自分は精神的に弱い人間だ」と自信を失いやすい。体調不良に自信喪失が加わればいい結果は出にくい。一度失敗すると、「プレッシャーに弱い」と自分にレッテルをはるから、再び大事な時に体調を崩すことになる。

 体調万全で試験や試合に臨めるならそれが一番だが。風邪をひくのはそんなに悪いことだろうか。実は、私もついさきごろ風邪をひき、鼻水とのどの痛みがひどい時にハーバード大学の研究班のミーティングで、研究の経過報告をしなければならなくなった。

 本来なら報告内容を一生懸命吟味するところなのだが、なにせ鼻水がひどく、話の間にくしゃみが出ないようにとか、声がかすれるのでなんとか声を出そうとすることで頭がいっぱい。おかげで緊張するひまがなかった。

 そう。風邪をひくといいこともある。力が抜けるのだ。余計な緊張がどこにもなくなる。頭がぼーっとするのは困るが、緊張して力が入りすぎても実力は出せない。

 試験や大事な仕事の前に風邪をひいたら、自分は弱い、と落ち込まないでほしい。力が抜けていいんだ、ととらえてはいかが。風邪をひく人は、余計な緊張をとった方がいいタイプなのかも。ちょっとぐらいは体調不良でも大丈夫ですよ。

2009.2.8.sun

マスクは生活の知恵

 この季節、マスクをする人が多くなるが、ボストンではマスク姿の人を全く見かけない。欧米ではどうやらマスクは嫌われているようだ。

 マスクをするのは重病の人というイメージがあるらしく、カゼをひいてもマスクをしない。外が寒く乾燥した風が冷たいからマスクをかけて歩いていたら、
不審な人に思われ、通勤電車で隣りに座る人がいないのには驚いた。
 それにもめげず買い物の帰りに赤信号で待っていたら、車が止まり、渡りなさい、と手でサインを送ってきた。重病人が野菜を抱えて信号待ちしているのが気の毒と思ってくれたらしい。

 なぜこんなにマスクをしないのだろう。他人に弱みを見せたくないという心理的な要因もあるのかもしれない。
 さて、マスクは日本の生活の知恵に思える。というのは、気温マイナス20度のボストンではカゼをひかないのに、東京に帰ると同じような行動をしていてもカゼをひきやすいのだ。

 これには人口密度と大気汚染の影響もあるのではと思う。地下鉄もショッピングセンターもこみ具合が全く違う。東京では誰か一人がカゼをひいていると途端にうつってしまう状況だから、マスクは欠かせないわけである。

 人にカゼをうつさない、という知恵。人口密度の高いわが国だからこその工夫だろうか。これからインフルエンザのはやるシーズンだから被害を最小限にくい止めるには予防が一番であるということはいうまでもない。

 寒い季節のマスクはカゼ予防だけではなく他の病気の予防にも役立つ。たとえば冷たい空気をいきなり吸いこんだ途端に心筋こうそくをおこす人もいるが、マスクをすればこうした温度差による発病も防げる。早朝の運動や、体育で寒い中を走るような場合、気管支ぜんそくなどの予防にも役立つ。

 マスクはファッションの面からはいまひとつだが、さまざまな生活の知恵を含んでいる。

2009.2.1.sun