10月2008

男の家事を後押し

 Aさんの息子は今年4月、実家から離れた大学に入学。大学の近くで一人暮らしを始めた。
 これまで全く家事をしたことがなかったのでAさんは心配していたが、半年が過ぎたら息子はすっかり自立しており、驚いたそうである。

 ワンルームの小さな台所で野菜の煮物を作り、洗濯をしてきちんと干し、アイロンまでかけるという。これまで栄養のバランスなど考えたこともなかったの、バランスのよい食事をとるようにもなったそうだ。「誰もやってくれないと、案外自分でやるものなんですね」とAさんは言う。

 ボストンにも多くの日本人学生がいるが、男子学生でも家事をきちんとできる人が多い。アパートでみな食事をしたら、自分の使った食器を流しに運び、さっさと洗っている姿を見かけた。一人暮らしをしているうちに、男性でも自分のことは自分でできるようになるようだ。過保護にしすぎないことは家事にも好影響を与えるらしい。

 ところで、ボストンで暮らし始めて気づくのは、仕事と家事の両立が日本より楽だということである。なぜだろうと点検してみると、食材、とくに野菜が調理しやすいようにして売られているのが一因だった。

 東京で野菜の煮物を作ろうとすると、一種類ずつ野菜を買い皮をむくという作業が必要だが、ボストンのスーパーには少量ずつすぐ調理できる状態で各種の野菜が置かれ便利なのだ。またサラダバーが充実していて、日替わりでサラダや前菜が購入できるのも助かる。スーパーには男性も食材を買い出しにきている。「男性でも家事に参加しやすい」食材が多いのである。

 コンイランドリーの乾燥機も約1時間でふんわり仕上がり、洗たく物を干す必要がない。男性が家事に参加するのは意識の問題だけではなく、特別な技術がなくても家事ができるシステムにも一因がありそうだ。

2008.10.26.sun

お酒を上手に飲みたい

 若者がお酒を一気飲みするのは日本だけではない。アメリカでも問題のようである。

 アメリカの飲酒年齢は21歳。その年齢に達していない大学生もいて、パーティーやスポーツの合宿などで大量に飲酒して病院に運ばれる例もあるという。いっそのこと飲酒年齢を18歳くらいに下げてしまおうという法案も出されるとのことだが、絶対に通らないだろうという予測が一般的である。

 私のいるボストンにはハーバード大学やボストン大学、マサチューセッツ工科大学など大学が多い。ここマサチューセッツ州は飲酒年齢に対してすこぶる厳しい。若者がちょっとビールでもと、スーパーに買いにいっても、そのつどIDの表示を求められる。

 いや若者だけではなくて、アルコールを買う時には誰でも生年月日入りのIDカードが必要なのである。私もスーパーでワインを買おうとしたらIDカードの確認が必要だった。

 こうした徹底ぶりはレストランにまで及んでいて、週末の昼下がりにワインと軽食を注文した若いカップルがIDカードの提示を求められていたのにはびっくり。ムードぶちこわしでここまでやらなくてもいいじゃないか、と思うのだが、「まあいいじゃない」というグレーゾーンがないのがアメリカ的といえるかもしれない。

 そして、お酒の売買をはじめ飲酒のルールはかなりきちんと実行されている感じがする。日本では若者が街角でビールや焼酎の缶を開けて盛り上がっているのを見かけるが、ボストンではそんな光景や、たばこを吸いながら歩くような姿は全く見られない。

 お酒に甘いといわれる日本。ここの若者にも「日本ってお酒が買いやすくていいよね」と言われた。飲酒に交通事故や一気飲み、飲酒を無理じいされ体調を崩すなどの問題・・・日本でも、もっと上手にお酒とかかわるルールや環境作りが必要か。

2008.10.19.sun

危機管理は大変なんだ

 ハーバード大学とダナハーバー研究所の危機管理に関しては、いわゆる院内感染対策のほかに治安対策も含まれている。

 日本では昨年、院内で発砲事件があり、入院患者が死亡するという悲劇があった。ダナハーバー研究所の病院内には危機管理室があり、院内で不審者を見かけたとき、職員はすみやかに院内に設置された電話で通報するように義務づけられている。また、院内の火災予防も徹底しており、新規職員のオリエンテーションでは、消化器の実地デモンストレーションまで行われた。

 私はこれまで大学病院をはじめいろいろな病院で働いてきたが、新規採用のオリエンテーションで火災予防訓練までされたことはない。
 また、医学研究室で働く職員はこうしたオリエンテーションとは別に、化学物質をあつかう場合の注意と放射性物質の管理ビデオをしっかり見ることになっている。

 こうした内容のほか、給与明細、休暇制度、健康保険などこと細やかな説明も行われるし、ちょっと驚いたのは、職員に「マニキュアの注意」までしていたことである。爪はみじかくカットし、マニキュアは禁止。バイオジェルやスカルプチュアという爪の上に爪を補強する物質をのせるおしゃれもやめてください、などと本当に細かい。

 こうした危機管理をすごいなあと思いつつ、病院の敷地内にあるカフェで一息入れようと思って座っていたら、なんと手術の白衣を着たまま外出している医師や看護師がたくさんいる。あれだけ徹底的に説明されているのに白衣のまま外出はまずい。

 ところが、さらに驚いたことには、その姿のまま地下鉄に乗って帰る医療従業者までいるのである。おまけにカフェでみかけた看護師は爪の先端が赤く光っていた。どこの場所でも危機管理は本当に大変なんだ、と痛感しながら過ごしている。

2008.10.12.sun

徹底的な危機管理

 8月からハーバード大学の客員研究員になりボストンに住むことになった。数ヶ月ごとにアメリカと日本を往復する。仕事を始めてハーバードの危機管理システムに驚いた。

 今、日本の病院の危機管理で問題になっているのは、院内感染と病院内の犯罪、医療事故などだろう。こうした問題に対して、わが国ではまだ徹底した対策やシステムがとられていない。さてハーバードではどうしているか。

 私はハーバード大学のHSPH(公衆衛生大学院)とダナハーバー研究所というガン専門病院で働いている。まず一番にすることは「健康スクリーニング」である。健康診断というと血圧や検尿が頭に浮かぶかもしれないが、そうではない。結核をはじめ風疹、ハシカ、おたふくカゼなど人にうつす可能性のある病気のチェックと、B型肝炎のワクチンを受けて抗体ができているか否かのチェックである。

 ツベルクリン反応まであるのには驚いた。院内感染は絶対に起こさない、という強う姿勢である。このスクリーニングをうけてはじめて「新規スタッフ研修会」が行われる。これはすべて危機管理オリエンテーションである。

 こうしたチェックシステムは、大学及び病院で働くすべての人に行われている。健康スクリーニングはボランティアや専用バスのドライバーなども等しく受けているようだ。しかも、スタッフ用の健康診断部門が、ダナハーバー研究所の一角に特別に設けられているのだ。予防にお金をかけることの大切さを痛感した。

 さて、東京にオリンピックをという動きが活発になっていると聞く。それに文句をつける気はない。しかし、地震や災害のリスクを考えると危機管理にお金をかけてほしいなぁ、とあらためて思ってしまう。
 医学も都市計画も共通した部分がある。予防と危機管理がまず一番にすべきことではなかろうか。

2008.10.5.sun