アメリカの大統領選まであとわずか。大学内の本屋さんには選挙関連の本が並んでいる。本のとなりには共和党、民主党それぞれのキャラクターであるゾウとロバの形をした容器に入ったミントが売られている。2ヶ月前の党大会のころはまだお祭りムードもあった選挙運動だが、経済危機が報道されてからはそのムードがなくなり、かなり深刻な雰囲気で進んでいる。

 さて、選挙と健康は一見全く関係がないようだが、実はそうではない。アメリカ国内の研究では、保守的な政党に投票する人ほど長生きの傾向があるという。つまり、そうした人々はよりよい環境に住み、すでに健康度も高い。だから公的サービスを必要とせず、社会保障制度を減少させる政策の政党に投票するといわれている。

 同様の調査はイギリスでね行われた。ジョージ・デイビー・スミスらによると、イギリス総選挙で83、87、92年のいずれも、死亡率が低い選挙区の住民ほど保守党に投票し、健康度が低い住民ほど労働党に投票したという。
 車の保有台数や住居過密度、失業率などの指数でも、豊かではない住民の多い地区は革新系に投票したそうだ。

 保守が選挙で勝利を得るには、みなが豊かで満足していなければいけないということだろう。世界中で格差が拡大し、一握りの人々だけが健康で豊かで富を独り占めする環境では、保守が選挙で勝利するのは、法則からみると不可能なことなのである。

 アメリカの選挙は、経済危機の進み具合と医療保険問題の進展が投票の最後の行方を左右するだろう。従来、保守絶対有利だった地区がいまだにどちらか決めかねているのは興味深い。
 「エリートだけ健康で豊か」な時代から「健康な人を多く」する政策が必要とされる時代なのだが、わが国の保守政党は、どうも選挙法則からみて負ける前提の政策をとりつづけているようだ。

2008.11.2.sun