人気のレストランに電話する。
「明日のランチの予約をとりたいのですが…」
「はい、ご予約ですね。ではお日にちからお願いします」
「…」

 カフェにて。
「ショートサイズのホットのコーヒーを」
「はい、コーヒーですね。サイズはどういたしましょうか?」
「…」

 はじめて行く美容室に電話。髪のトリートメントのコースがたくさんあるので内容を質問する。受付の返事。
「私は受付で担当者ではないので、いらしてから聞いてください」
 コースによって時間が全く違うので困るのだけれど…。

 会社に電話。名前を告げると。
「いつもお世話になっております」
さわやかでいい感じのお返事。不在の相手に伝言をしようとすると、
「すみません、どちらさまでしょうか?」
 あらあら、と思うことが多いこのごろだ。

 百貨店のブティックにて。仕事向きのジャケットを買おうと思ったが、袖が長い。若い女性定員が、書類をはさむクリップで袖口をとめた。クリップの重みで袖にシワが寄り、きれいなシルエットにならない。買いたいから袖の長さをきちんと決めたいと話したが、最後までクリップでとめたまま、ピン打ちはしない様子。買うのはやめた。

 友人に話したら、「もしかしてピンでとめて長さを決めるなんて知らないんじゃない」。素人の時代だ。分業とマニュアル対応。コミュニケーションの不在。

 前述のレストラン、美容室には最近行っていない。件のブティックにも行く気がしない。消費の低迷は、こんな珍問答、コミュニケーション不在にも原因があるのでは。