新型インフルエンザ大作の成功で、死亡者が少なかったと対策本部が発表していた。果たして対策の成果か、ウイルスが弱毒性だったためか、しっかり検証しないとまずいなぁ、と思う。

 というのも、病気予防のキャンペーンの枠組み作りで、日本は残念ながら後れをとっている。アメリカの新型インフルエンザ対策キャンペーンは、お見事だったと思う。キャンペーンによって、人々の行動にははっきり変化が表れたのを目のあたりにしたからだ。

 とにかく、人々は洗面所でよく手を洗うようになった。それも、いわゆる知識人層だけでなく、低所得層の集まるショッピングセンターでも同じだった。インフルエンザ流行前、手にしっかり石けんをつけて何秒か洗う人は少なかったのに。

 第2に、手を消毒するグッズが薬局に登場した。かつてはみられなかった新商品である。
 キャンペーンは明快で、手洗い、うがい、くしゃみとせきは自分の手と腕でガードする、ワクチン接種を受けよう、というもの。日本ではもうどこも報道しなくなった3月中旬も、「インフルエンザの季節はまだ終わっていません」と、手洗いのすすめを地元ラジオ、地下鉄やバス、ショッピングセンターのポスターがくり返していた。

 とにかく徹底しているのは、メディアが多様化していて、ヘルス情報を送る手段が多いためもあるだろう。日本人は健康意識も高いし、清潔好きだ。
 しかし、ことがおこった時の対応は徹底しないことが多い。東京では、インフルエンザ流行時もその後も、洗面所できちんと手洗いする人が少ない。

 ポイントをしぼり、きっちり伝えたいことをしつこく伝える、というのが健康キャンペーンの枠組みだ。実はこれは、政策キャンペーンの枠組みの成功例と共通している。一過性の情報を大漁に流して、あとはフォローしないわが国のメディアや政策は、一考が必要だ。