アメリカ人は人前で話すのが得意で日本人は下手、と思っている方が多いのではないだろうか。

 先日、オバマ大統領がヘルスケアプランを発表していた。ほぼ1時間にわたるスピーチを「読まず」に話していたのをテレビで見たが、ずい分日本とは違うなあ、と思ったりした。

 学会も同じで、アメリカの学会では、パワーポイントの文字数はごくわずかで、ポイントだけが紹介され、あとは発表者が「読まず」に「話す」。

 日本の学会だとパワーポイントの文字数は多くて、「話す」人は少なく「読みあげる」人がほとんど。だから私は、アメリカで発表する時と日本の時ではパワーポイントを作りかえる。

 それでは、本当にアメリカ人は話すのが得意で日本人は下手かというと、私は決してそうではないと思う。要はトレーニングと経験の問題なのだ。

 アメリカの場合、カリキュラムにパブリックスピーキングや、リーダーシップという単位のある大学が多い。もちろんパワーポイントを使い効果的に話をするというコースもある。スピーチ内容だけでなく、いかに聞き手とコンタクトをとるか、どんなふうに動くか、なども評価される。学生が互いに問題点っを見つけあったりする。こうしたコースで経験を積めるから、人前でのスピーチが上手になるのである。

 私の所属するダナファーバー研究所(ハーバード大学の関連施設のがん研究所)では、職員向けにパブリックスピーチのクラスが開かれていて、職員なら誰でも参加できる。平日のランチタイム、あるいは仕事が終わった後に行われているのだが、参加者の話を聞くと「自分は人前で話すのが子供のころ震えるくらい苦手だった」という人が多いのに驚いた。アメリカ人はスピーチが得意なのではなく、スピーチの訓練を積み、経験しているのだ。苦手は訓練でしかのりこえられない、と痛感した。