「ヘルスコミュニケーション」と聞いて、何を思いうかべますか?医師と患者間の対話を連想されるのでは。

 ハーバード大学HSPHのヘルスコミュニケーションは病院内のそうした対話だけでなく、日本でいえば「健康教育」と「メディアキャンペーン」なども対象としており、医師だけでなく心理学者、社会学者、メディア関係者、統計学者が参加した幅広い研究がなされている。

 教育格差の壁をこわしながら、いかに正確な予防医学の知恵を一般の人々に伝えるか。各分野のテリトリーの壁を越えた大がかりな研究である。

 ハーバード大学ビスワイス博士の講義には、他大学のマスコミ学の教授や放送局のチーフも参加し、実に活発な意見交換が行われる。
博士はアメリカでの禁煙キャンペーンプログラムに参加したメンバーなのだが、社会全体に医療健康情報を伝えるには医師の力だけでは不可能だという。

 日本では、医師と他分野の学者たちが一緒に研究していくというのは難しい。みな自分一人がトップになりたがり、協力しあうのが下手なのだ。日本は組織力が強いといわれるが、研究分野ではそれが機能せず足をひっぱりあうのが残念。こんな分野を日本でもつくりたいものだ。