高校進学率が94%をこえるわが国では想像するのが難しいかもしれないが、アメリカで今問題になっているのは経済格差や教育格差とがん死亡率の関係であ る。ハーバード大学HSPHではヘルスコミュニケーションとよばれる研究部門があり、こうした格差についての研究が行われている。

先週もふれたが、すべてのがんについて黒人の死亡率は白人にくらべて高い。がん予防には予防知識と実践、早期発見が不可欠だが、低所得層や教育が不十分な人々では情報不足が予防の障害となる。インターネット普及後はその格差はますます増大している。

私の所属しているビスワイス博士の研究チームでは、国の援助によって格差縮小を実現し、がんを予防しようという大がかりな試みをスタートさせた。低所得 の人々に無料でパソコンを提供し、パソコン教育を実施。ハーバード大学の開発した小学6年程度で理解できる医療情報にアクセスできるようにした健康教育で す。

この教室、土曜の朝や平日の夜行われる。土日は休みで9時から5時までといわれるアメリカだが、スタッフは土曜の朝8時から出勤。よく働く人たちだが、その背景には格差是正への情熱とスタッフ間のコミュニケーションの良さがある。