ハーバード大の本屋さんで、コミュニケーションについての興味深い本を見つけた。この大学の教授で医学博士のA・クリスタキス氏による、人と人とのネットワークに関する本だ。

博士は、フラミンガム調査という、かつてアメリカで行われた大規模な疫学研究をもとに、肥満の人や喫煙者のネットワークを調べた。肥満の人は、同じ傾向の人と関わりを持ち、喫煙者は、友人や家族にも喫煙する人が多いと報告している。

また、幸せな気分の人は周りに幸せな気分の人が多く、気持ちが落ち込む人は似た人が周りに多かったり、関わりを持つ人が少ないと発表している。「似たもの同士」というが、気分や状況は人から人へと伝わるのだ。

博士は、人から人へと伝わる感情は、友人の友人のそのまた友人、つまり3次ステップまで影響するとも述べている。「人なんか関係ない」という人がいるが、そんなわけにはいかない。池に石を投げると波紋が広がっていくように、自分の気分は、友人や家族に伝わり、そのまた友人にまで伝わるのである。

禁煙をすすめたり肥満を改善するには、本人だけでなく、その人の友人や家族、関わりのある人たちにも働きかけないと効果が薄いということだろう。逆にその人だけでなく、周りのネットワークの人々全体に働きかければうまくいくともいえる。

今、何となく日本中に停滞感や自信喪失、意欲低下のムードがいっぱいなのは、そんな気分が波紋になって増幅しているからかもしれない。マスメディアはいい波を起こし、大きく伝える作用も持っている。

新聞などマスメディアで流れるニュース。暗いことばかりに目を向けるのではなく、街のいい出来事、明るい話題も取り上げてほしいものだ。いい気分の波を起こそうとする人が、増えてほしいと思う。