犬が助手席の窓から顔を見せて走っている車を見ると、かわいいな、と思わず眺めてしまう。我が家の猫などは、ケージ(カゴ)に入れて車に乗せるだけで大騒動になるから、おとなしい犬がうらやましいと思う。

しかし先日、アメリカの新聞「USA Today」で、犬をケージに入れず車に乗せると事故率が高まり危険、という記事が載っていた。翌日には、CNNテレビが、携帯電話で通話中のドライバーによる事故を大きく取り上げた。もちろん、ハンズフリーの電話だから、両手はきちんとハンドルを握っている。しかし、研究者によると、それでも携帯電話で話していると、ドライバーの意識は電話に向けられ、目の前の運転でとっさの対処に遅れが出るのだそうだ。

CNNのインタビューでは、携帯電話で話しながら運転中の車にはねられて亡くなった人の家族が、運転中の通話禁止を叫んでいた。

人間の集中力には限界がある。運転は命の危険を伴う作業だとの認識が必要だろう。ハンズフリーの携帯電話で話しながら手術をするなんてとんでもない、と思うが、それと同じようなリスクがあるのだ。

自転車に乗りながら、ヘッドホンを付けて音楽を聴いている人、横断歩道で携帯電話を使いながら歩いている人。日本も「ながら族」が多い。自分の集中力を過信するのは、自分はもちろん、他人のリスクも高めている。

人間は自分が聞きたいものだけを聞き、見たいものだけを見る、と言われる。自分の意識を向け、「聞こう」「見よう」とする対象物にしか集中できないのだ。

聞こうとしなくちゃ、授業で何を教わったか覚えられないことでもよく分かる。上の空で聞いても頭に入らない。授業ならまだ、後で取り返しがつくが、命の危険に伴う作業に「上の空」は禁物だ。