アメリカのラジオ番組は、日本のそれとはちょっと違う。私は、ボストンにいるときは、全国ネットのテレビより地元のラジオを聴いている。地元情報はもちろんだが、政治や文化に関するかなりつっこんだ聴取者との討論番組が多く、ラジオに対する意識が日本と違っている。

 そんな背景のあるアメリカのラジオ番組で、博士の学位を持つ女性ゲストが黒人差別の言葉を連発した一件が大問題になり、2週間以上CNNを騒がした。この問題に、あのサラ・ペイリンがツイッターでコメントしたこともあり、連日報道が続いた。さらに、CNNのキャスターが興味深い調査を試みた。

 肌の色が白から黄、褐色、黒と数段階に異なる子供のイラストを子供たちに見せ、どの子がイヤか、不快感を感じるイラストを指してもらう。子供たちは5歳くらいの年で、もうすでに、6〜7割が、黒色と黒色に最も近い褐色の肌のイラストに不快感を示したという。中学生くらいに成長すると、「肌の色と人格とは関係ない」と主張する子供も出てくる。しかし頭でそうわかってはいても、しみついた肌の色への差別感は感情的な要素が強く、小さい頃からの刷り込みを取り去るのがいかに難しいかを示していた。

 報道では、この「肌の色に対するステレオタイプの思い込み」を論じていた。大事なのは、感情的な差別はどうしても存在する、それを忘れてはいけないということだろう。

 ステレオタイプといえば、男は強く、女は優しくかわいいのがいい、というのもそう。女性が社会進出して活躍するのがよろしい、と頭ではわかっている男性は多い。しかしいざ、実際に職場で女性が自分よりバリバリ働くと、男性の同僚が同じように働くよりも、ずっと不快になる人が多い。心の中の刷り込みを無視せず、その存在に気付くのが大切だ。