Aさんは接客業。高級品を扱う店のトップクラスで、お客さんの信頼も厚い。感じもよい。なのに仕事仲間の評判はいまひとつで、友人と呼べる人はほとんどいない。

 一方、Bさんは企業勤めの事務職。Aさん同様、仕事もよくできてまじめで、トラブルの時もBさんがいるときちんと解決できるので、上司からも部下からも一目置かれている。にもかかわらずBさんと親しい人はいない。

 別に感じは悪くないのに、いやむしろいい感じの人なのに友人になりたいと思わない人がいる。本人もどうして友人ができないのだろうと首をかしげたりするが、そんな場合はひとつの共通点がある。「マッチング・ミス」とでも名づけられる現象である。

 Aさんは常に穏やかで、人と対する時いつも笑顔をうかべている。話し方のペースもゆっくりしている。一方、Bさんは常に冷静で沈着。仕事場でお客さんと対する時は、いつも笑顔やいつも静かなのは信頼感を生む。

 しかし、友人関係となるとちょっと違う。「こんなに困ったことがあって頭にきちゃった」と興奮している時、相手に笑顔でにっこりされるとなんだかバカにされた気分になる。

 「大変だ。こんなことが起こった」とか、「聞いて、聞いて。今日こんなことが起こったの」と話そうとした時、冷静沈着に「それでどうしました?」と言われるとなんとなく肩すかし。

 「エッ、どうしたの?」と、自分のペースに「マッチング」してくれる相手と、人は心を開いて友人関係になりたくなる。まず相手のペースに合わせて応える。そして、相手が興奮したり落ち込んでいる時は少しずつ気分が変わるようにペースを工夫すればいい。

 いつもにこにこ表情を作っている人より、自然な笑顔や真顔で対してくれて、まずは自分のペースをそのまま受けとめてくれる人と、人は友人になりたいと思うものだ。