小学生から英語義務教育がはじまるという。コミュニケーション能力を高めるため、とのお題目だが、語学力=コミュニケーション能力ととらえるならば大間違いである。

もちろん、言葉と語学力が大切で不可欠であることはたしか。しかし、外国人とのコミュニケーションには思考回路の違いを認識しなければならず、それ抜きだと大失敗する。ちょっと食事をしたり、旅行先で表面的なおつきあいをする分には支障もないが、ビジネスや政治では大変なことになる。

 鳩山首相とオバマ大統領の一連の基地問題にかかわる会談でも明らかだ。国立大を出て留学経験のある鳩山首相だが、日本でしか通用しないスタイルを使ってしまったのだと思う。アメリカではイエス・ノーをはっきりさせるのが大切、とは誰もが知っている。しかし、なぜそれが大切かを認識している人は少ない。

 アメリカでは、政策でも方針でも、まずフレームワークを確定させるのが最重要だ。ノーというフレームを作り、それに沿って内容を決めていく。「トラスト・ミー」と首相がリップサービスしてしまった一言は、イエスと見なされる。内容の詳細は変更可能だが、枠組みを崩すと全く信用されない。

 第二の失敗は、これまた日本なら通用するスタイルで、「何となくやっているふりをしていればわかってくれる」というもの。いくら努力の姿勢をみせても、結果を出さなきゃ通らないのがアメリカ社会。夜遅くまでの仕事を「偉いね」とは言ってくれない。結果を出さないと能力不足という評価だ。

 第三は期日。いわゆる締め切り日である。アメリカ社会は締め切り日を大切にする。時間がきたら病院も閉まってしまう話は前にも触れた。締め切りを守れなかった人に、「まあ仕方ないね」とは言ってくれない。語学力だけでは足りない能力があることを知ってほしい。