10月2009

思考を手放すひととき

 今、アメリカではマイケル・ジャクソンの死にからみ、不眠症治療薬のさまざまな『カクテル』の報道が盛んになされている。それによると、それこそ尋常ではない量の睡眠薬や抗不安薬が投与されていたことがわかる。

 中には普段では使用しない手術の時の前投薬もあるようで、マイケルさんが特別の立場だったために投与を受けられたことも悲劇の引き金になったようだ。しかし、これだけの量の睡眠薬に依存するような不眠症に陥ること自体が悲劇といえるだろう。

 不眠症に苦しんでいる方は多いと思うが、野生動物に不眠症はないだろう。ものを考え、悩むことを覚えた人間ゆえの特別な病気なのだと思う。現在は便利な睡眠導入剤もたくさんあるから、いざとなれば服用すればいい、ということもあるけれど、やはりまずは生活改善と「思考を手放すひととき」をつくることをおすすめしたい。

 8月末から再びボストンで研究生活をしていたが、ホストンに着いて数日間は確実に睡眠のリズムが乱れる。朝早く目が覚めて夕方眠くなるというお決まりの時差ぼけ。生活のリズムが乱れると睡眠のリズムも当然乱れる。

 現代人は日々の生活が時差ぼけのようなリズムになってしまう方が多いのではないだろうか。夜遅くまで仕事やインターネットやテレビで頭を使い、神経をすりへらす。その割に肉体を使っていない。脳だけ使って体のエネルギーは消費していないというアンバランスも不眠症の引き金だ。

 不眠症の改善と予防には、夕方の運動が有効だ。眠る直前の運動はかえって目がさえるので、夕方の散歩やストレッチをおすすめしたい。
 そして夜、「思考を手放すひととき」をつくってほしい。不安をまぎらわすために深夜パソコンで時を過ごすことが逆に不眠の引き金になる。受験生や夜仕事をする人は、ぜひ「考えない時間」を。